引きこもりの分類と対応法


$1 引きこもりとは

 引きこもりとは人(子どもや大人)が主として自分の家の中で生活をして、家から出てその人なりの社会活動をしないか殆どしない人の姿、状態です。引きこもる人は何かに反応して辛くなり、荒れたり問題行動をしたり、辛い心の病の症状を出したりしていますから、その辛くする何かを避けるために引きこもります。引きこもってもその辛くする何かを避けきれないときには、荒れたり問題行動をしたり、辛い心の病の症状を出し続けます。

 投薬治療を受けている子どもや大人は心の辛さが薬で修飾されているために、ここでの分類や対応法が当てはまりません。

 子どもとは未成年者と考えて下さい。大人とは20歳以上の人を考えて下さい。但し20歳以上の人でも心が辛い状態の人(情動で回避系の反応が主として働いている人)へは、その心は子どもの心を当てはめた方が良い場合が多いです。

 現在、ニート、フリーターと引きこもりを混同して使っている人が多いです。ここでは、子どもの心のエネルギー状態から定義をしておきます。ニートとは引きこもらないでその子どもなりの社会活動をしているけれど、経済的な収益を上げていない人です。その子どもなりの社会活動をしているけれど、経済的な収益を得る意欲がない人と、意欲はあるがその収益を上げる場が無い人とがいます。フリーターとは経済的な収益を得ているが、経済的に自立するのには不十分で、その不十分な部分を自分から補おうとしない人、補う場所がない人です。


$2 引きこもりの種類

 子どもの引きこもりには、子どもの心の辛さが強い順に以下のようになります。但し薬を服用している子どもには、この分類は当てはまりませんし、対応法も当てはまりません。

1)自分の家の中の物(家具などや親兄弟)に反応して、主として自分の部屋の中で生活をしている子どもの引きこもりがあります。

2)自分の家の外の物(近所や人)に反応して、主として家の中で生活をしている子どもの引きこもりがあります。
2−1)全ての家の外の物や、全ての人に反応して外に出られない
2−2)近所の物や、近所の人に反応して外に出られない。近所で無ければ、身内や近所の人など知り合いで無ければ外に出られる。夜中などでは近所の店に行かれる
2−3)見かけ上は引きこもっているけれど、自由に外に出られるし、人に会っても平気な場合がある(ニートの範疇に入ります)。


$3 引きこもりへの対応

 引きこもりの子どもへの対応の基本は、全てに優先して子どもの心を楽しくして、子どもの心が元気になるのを待ってあげることです。子どもの心を楽しくする物とし、ゲーム、テレビ、漫画、ネット、音楽などがあります。子どもの心が楽になると、子どもには現状に満足しなくなり、その子どもなりに何か新しい物を求めて動き出す本能があります。その本能が働き出すと、子どもは引きこもりを止めて、自分の周囲の社会へ、子どもによっては学校へと出て行きます。

 子どもの心を辛くする物の多くは、学校、教師、友達、勉強、生活を正すこと、年長の子どもでは仕事に就くことを意識する(就労刺激)ことです。これらを親が与えないばかりか、これらから親が守ってあげる必要があります。

 子どもを引きこもりから引き出す対応は、基本的に引きこもる子どもの本心の否定になります。子どもに辛さを生じさせる物を見たり意識させることになります。子どもの辛さを強めて、より引きこもろうとするようになります。解決を遅らせます。

 子どもによっては、子どもを大人の力で引きこもりから強引に引き出すと、子どもは引きこもりを止めて社会活動を始める場合があります。そのような子どもの多くは、良い子を演じています。無理をして社会活動を開始しています。未だ良い子を演じるエネルギーを持ち合わせているか、引きこもっている間に良い子を演じるだけのエネルギーを貯めた子どもです。無理をして社会活動をしていますから、時間とともにエネルギーをだんだん失って、最終的により辛い引きこもりに戻ってしまいます。引きこもりに戻ってしまう迄の時間は、持ち合わせているエネルギー量と、失っていくエネルギー量で異なります。時間とともに失うエネルギーがなければ、子どもはそのまま社会に出続けます。しかしこのような例は皆無のようです。


$4 具体的な引きこもりの子どもへの対応法

1)自分の家の中の物(家具などや親兄弟)に反応して、主として自分の部屋の中で生活をしている子どもの引きこもりがあります。この引きこもりは、親が子どもの本心に沿わない対応をするために、親が子どもを辛くする物(登校刺激や就労刺激)を与えているために、親を拒否して自分の部屋に引きこもっています。自分の姿を意識して、自己否定からの葛藤状態にあります。親がいないときには部屋から出て、家の中で生活をします。親が子どもを辛くする物の多くは、登校刺激や就労刺激、生活を正せ、という親の希望です。これらの親の対応、登校刺激や就労刺激、生活の乱れを注意することを止めて、子どもの素直な生き方(昼夜逆転など)、子どもなりの楽しみ(ゲームやテレビ、漫画など)を認めると、子どもは部屋から出てきて、家の中で生活が可能になります。次の2−1)の段階の子どもになります。

2−1)自分の家の外の物(近所や人)に反応して、主として家の中で生活をしている子どもです。との引きこもりの内でも、全ての家の外の物や、全ての人に反応して、自分の家から外に出られない子どもです。この段階でも親から登校刺激や就労刺激を子どもは受けていますし、自己否定も続けていますが、その程度は1)の段階より少なくなっています。子どもがこの段階を早く終えるには、親が徹底的に学校や就労を忘れる必要があります。先回りをしてでも親が子どもを、学校刺激や就労刺激、生活の決まりから開放してあげると、子どもの心が元気になり、子どもの生活範囲が広がっていきます。次の2−2)の段階の子どもになります。

2−2)近所の物や、近所の人に反応して外に出られない子ども。近所で無ければ、身内や近所の人など知り合いで無ければ外に出られる子ども。夜中には近所の店に行かれる子どもには、先回りをしてでも登校刺激や就労刺激から子どもを守り、安心して引きこもる場所を作ってあげる必要があります。安全な場所を家庭内に作ってあげることだけで、子どもの心は元気になっていきます。見かけ上は引きこもっていても、必要を感じたら引きこもりを止められます。次の2−3)の段階の子どもになります。

2−3)見かけ上は引きこもっているけれど、自由に外に出られるし、人に会っても平気な子どもは、親が子どもを信じて待っているだけで、その子どもなりに社会へ出て行きます。子どもの中には学校に行き出す子どももいます。親は親なりの生活を続けておいて、子どもに関わる必要が無いです。子どもは引きこもることで何かをしようとする意欲を高めて、意欲が高まったら自分から(親が引き留めても)引きこもりを止めて、社会活動を開始します。この経験の積み重ねから、私はニート、フリーターの人にも、引きこもることを勧めています。


$5 大人年齢の子どもの引きこもりへの対応法

 20歳から30歳代の引きこもりの大人でも、引きこもりの子どもへの対応が当てはまります。その人を辛くする物の内、登校刺激は無くなりますが、労働刺激が強くなっています。また、自己否定という、自分の中で作る辛さ、葛藤が大きな意味を持ってきます。親は引きこもりの人に自己肯定感をもてるような対応をする必要があります。ありのままのその人を認めようとする必要があります。

 今までの私の臨床経験ですが、子どもの心が辛くなる大本は義務教育年齢では学校です。大人になりますと労働と自己否定です。高校生年齢ぐらいですと、両方の要素があります。現実にはいろいろと子どもにとって辛いことが起こりますが、それらはこれらの基本的な辛さから派生して生じており、その派生した辛さが大本の辛さを強くするという悪循環を起こしています。この事実に同意して下さる人は今のところ殆どいません。しかし派生した辛さを解決しても、その人の心は元気にならないし、派生した辛さを解決しなくても、大本の辛さを解決するだけで、派生した辛さも解決できるという事実を、私は積み重ねています。

 40歳代の人になると、心の辛さが無くなっても、自分から動き出そうとする能力が少なくなっているなあと感じる人が増えてきます。50歳代になると、心が楽になってもその時のその人の状態から、新たな別の生き方を模索しようとしなくなているなあと感じる人が多いです。言葉では動き出すようなことを言っても、行動を伴わない場合もあります。
その代わり、心が元気になった40歳代、50歳代の人には説得が効果的になります。説得に納得できたら、その人が意識的にその人の生き方を変えることが可能になりますし、生き方を変えようとする人が出てきます。過去に学んだことを参考にして動き出す場合があります。30歳代の人ですと、自発的な心の動きから社会的な活動を始めたのか、理性から社会的な活動を始めたのか、区別がつきません。


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