児童、思春期の子どもの心の病をどう捉えるのか 1−2版2015.3.24
(脳科学から子どもの心の理解)
目次
$0 定義
$1 脳科学から見た子どもの心(「子ども論」第一章 諷詠社 参照)
$2 子どもの情動
$3 rules for unabled mindとrules for capable
mind
$4 よい子を演じる fair action 2−2回避系の本能を参照
$5 母親 2−1接近系の本能を参照
$6 子どもの行動を考えるとき
$7 躾
$8 辛さを生じる条件反射(fecor)( トラウマその成因と回復法、諷詠社参照)
$9 なぜ人々は人に存在しない心の病を考えるのか?(子どもの心の病、諷詠社参照)
$10 発達障害
$11 鬱状態
$12 向精神薬の効果、大量投薬と減薬の問題
$13 子どもへの長期投薬
$14 認知療法
$15 未就学児の心の問題
$16 大人の心の問題と心の病について
$17 反抗期
$18 不登校 (子ども論、第二章参照)
$19 いじめ、いじめられ (子ども論第二章参照)
$20 子どもの犯罪 (子ども論第二章参照)
$21 ありのままのあなたでいいんだよ
補足 認識の脳科学 ほ乳類での脳の情報処理の仕方
$0 定義
0−1 心とは脳の機能
意思、記憶、思考とは異なっているが、心という点ではとても密接な関係があり、ここではこれらを同意語として使っています。 また、運動、行動、反応も心という点では密接な関係があり、同意語として使っています。 情動とは感情より広い意味で、大脳旧皮質の活動を総称して使っています。呼吸、循環、消化器、皮膚、筋肉、内分泌、免疫などに変化を来すことで表現されます。
脳の機能は大脳新皮質の機能と、大脳旧皮質の機能とに分かれる。大脳新皮質の機能は感覚情報の処理、記憶、認知、認識、運動(反応と同じ意味でここでは使います)。大脳旧皮質は情動。
体外からの感覚情報は感覚野で処理されて、記憶(頭頂葉、側頭葉)されて、認知(前頭前野)される。認知された情報は、記憶に照らし合わされて、運動野で運動(反応)情報が作られて、体全体の筋肉に情報が送られて、具体的な運動になる。認識とは認知された情報の内言語化した内容を言う。
情報は記憶から同時に大脳辺縁系の扁桃体に送られて情動評価をされて、情動情報が作られて、自律神経を介してから中の臓器に表現される。この体中に表現された情動を認識したときに、この情動を感情と表現する。情動情報は運動野にも送られて、情動行動として表現される。
0−1.1 心とは脳の機能と考える考え方を精神身体一元論という。子どもでは必ず精神身体一元論で心を考える必要がある。
0−1.2 心とは精神世界であり、その精神世界が人間の脳に作用をして、人間活動をしていると考える考え方を精神身体二元論という。心が元気な大人では精神身体二元論でよいが、心が辛い大人では、精神身体一元論が当てはまる。今の精神医学はこの精神身体二元論から人の心を考えている。現在の精神医学はほとんどすべてで約束事であり、客観的な根拠を持っていない。
0−1.3 思考とは記憶を選択して反応することを言う。動物は意識に上らない思考をしているが、人間では意識に上る思考もしている。意識の定義はまだ確立していないが、思考を利用していること、言語で表現することが必要条件である。
0−1.4 人間の情動の表れを我々はいろいろな言葉で表現するが、その本質は接近系(喜び、その刺激を報償と言う)と回避系(恐怖、その刺激を罰と言う)とに分けられる。
0−2 人間の行動は脳内の情報の処理の仕方から、3種類の行動に分けられる。
0−2.1 意識行動 記憶を用いて意識からの行動。その表現は大人では言葉と行動だが、子どもでは言葉だけ。
0−2.2 認知された情報からの行動。情動の接近系の行動を繰り返すことでも形成される。皮質反射とも言う。習慣行動として理解される。習慣行動として成立すると、情動を伴わない行動になる。
0−2.3 情動行動。本能からの行動と、主として母親をまねして作られた情動からの行動がある。その表現は子どもでは行動と表情に表れる。大人では意識で調節されているから、表面に出てこない。ただし情動が強く働くと、感情として表現され理解される。
に分けられる。新生児では本能行動だけだけれど、乳幼児、幼児になると、母親をまねすることで形成されてくる情動からの情動行動、本能行動と情動行動を繰り返すことでできあがった習慣行動から行動をするようになる。年齢が進むにつれて、習慣行動の割合が多くなり、大人の多くの行動は習慣行動である(脳科学から見た子どもの心を参照)。
0−2.4 刺激を受けてから行動を起こすまでの反応速度は皮質反射が一番早く、次に情動行動であり、意識行動が一番遅い。刺激を受けるとそれに対する皮質反射を学習している人はすぐに皮質反射可能反応を行った後に、情動を生じる。大人はその生じた情動を短時間に調節する。
0−3 心が元気な子どもの論理と心が辛い子どもの論理
0−3.1 今までの常識からの子育てが可能な子どもへの対応の仕方を「心が元気な子どもの論理 rules
for capable mind」と呼ぶことにする。
0−3.2 心が絶えず辛くて、些細なことで問題行動や病気の症状を出す子どもへの対応の仕方を「心が辛い子どもの論理 rules
for unabled mind」と呼ぶことにする。荒れる子ども、事件を起こす子ども、病気の症状を出す子どもの心を理解するには、このrules
for unabled mindを理解する必要がある。
0−4 人の情動は3,4歳頃にはできあがり、それ以後変化をすることはない。条件反射およびそれに類似する反射はその情動を変化させる唯一の方法である。ひとたび条件反射で情動が変化をすると、その消失には長い時間がかかる。条件反射が繰り返すことでより条件反射(条件反射を生じる神経回路)は強化される。条件反射には条件刺激が接近系か回避系かと言うことで、接近系の条件反射と回避系の条件反射がある。
0−4.1 接近系の条件反射としてパブロフの犬の実験が有名である。動物の飼育に利用されている。
0−4.2 回避系の条件反射は動物実験の際の動物の学習に使われている。回避系の条件反射は回避行動を誘発するので、辛さを生じる条件反射(fecor)と呼ぶことにする。辛さを生じる条件刺激(fedos)に反応して、辛さを生じる条件反射(fecor)を生じる。
0−4.3 トラウマとは突然、死んでしまうのではないかと思われるような辛い症状を感じ、コントロール不能な辛い症状を出し、日常生活が不可能になる状態をいう。その原因としていろいろな人がいろいろな説を唱えているが、少なくとも辛さを生じる条件反射(fecor)はトラウマを説明できる。
0−5 辛い刺激を嫌悪刺激という。よい子を演じる、荒れる、問題行動をする、心の病の症状を出す。
0−5.1 よい子を演じるとは、子どもが自分の素直な姿ではなくて、大人の希望する姿を演じることを言う。素直な姿、本心からの行動なら接近系の行動だが、よい子を演じているときには、見かけ上接近系の行動であるが、情動から言うなら、回避系の行動である。
0−5.2 荒れるとは、子どもが何かに反応をして、暴力行為をして物を壊したり、相手を攻撃することを言う。問題行動とは大人が嫌がる行動を言う。荒れることも問題の行動の一つである。
0−5.3 心の病の症状とは自律神経の症状と精神症状を言う。嫌悪刺激が加わると程度の差はあっても必ず自律神経症状がでる。それは生体を危険から守るための反応だが、その程度が強いと病的に感じるし、病的な変化を体に生じる。
0−5.4 心が辛いとは、子どもが辛い刺激から逃げ出せなくて、よい子を演じている場合、荒れたり問題行動をしている場合、心の病の症状を出している場合を言う。そのときは出していなくても、すぐにこれらの反応を起こしてしまう場合もいう。ただしよい子を演じる場合は、その場ではわからない。ある程度時間がたってわかることである。
0−6 刺激に対して反応をする反応の仕方、自発的な行動の仕方を性格という。大人では思考行動と習慣行動が大きな割合を占めている。子どもでは、本能、母親をまねして成立した情動と、本能と情動からの反応を繰り返すことでできあがった習慣行動からなる。年齢が進むと習慣行動の割合が増える。思春期を過ぎるとある時期から突然意識行動が現れ、情動行動の割合が減っていく。
0−7 障害とは日常生活の中で、性格に不都合な性格を言う。今の精神医学では著しく日常生活に著しく障害を生じる性格を病気としているが、障害と障害で無いものとの間は連続的で、明確な境界はない。
0−8 ストレスとは何か。動物が受けた刺激から回避行動をとる刺激を嫌悪刺激、辛い刺激、罰刺激、ストレス刺激など表現する。ストレスという言葉にはストレス刺激という意味とストレス状態(ストレス刺激を受けて、ストレス刺激から逃げられなくて、心が辛い状態にある)という意味の二つの意味がある。
0−9 ミラーシステムとは、動物が真似ができる脳内の神経回路を言う。具体的にはまだ詳しくはわかっていないけれど、見ているだけで、聞いているだけで、完全でないけれど、ほぼ同じ行動ができるようになる神経回路が脳内に存在している。乳幼児の情動の学習、生活習慣の学習、いろいろな技術の学習など、本能から以外の行動は、そのスタートはミラーシステムで行動を覚えて、繰り返すことで行動を上達させている。
0−10 病気とは。生理的には存在しない、生体内の物で生体に、日常生活に、不都合を生じる場合、これを病気という。単に日常生活に不都合を生じる場合は、障害という。障害だけでは病気ではない。障害は文化に大きく影響を受ける。原因が生体外に存在して、その結果生体を程度の差はあっても破壊して、生体に、日常生活に、不都合を生じる場合を、外傷という
$1 脳科学から見た子どもの心(「子ども論」第一章 諷詠社 参照)
心は脳の機能である。子どもの心は大人の心と異なる。
行動に直接関わる脳の機能を 本心(real intension) と言う。 子どもの本心は情動(旧皮質、大脳辺縁系)だが、大人の本心(新皮質、前頭前野)は意識である。
1−1 子どもは言葉を話す。形態、行動は人間 。 しかし心は動物、特に類人猿とほぼ同じ心(情動)と、人間の大人と共通の心(意識)とを持つ。 子どもは年齢が少なければ少ないほど、体が小さく運動能力も低いから、親への依存度が高くなる。 思春期になると体も運動能力も大人並みになってくるが、社会生活という意味では親へ依存をしなければならないことが多い。 それは思春期だといっても、その心は子どもの要素を強く持っていることによる。
$4 よい子を演じる fair action 2−2回避系の本能を参照
子どもがその辛さを回避するためによい子を演じるという行動をとる。 子どもが他の人から辛い思いをさせられているとき、子どもとしては不本意だが、その人が希望する行動をして、その人がそれ以上その子どもに辛い思いをさせないような行動の仕方を無意識に見つけ出して、行動をする。 そのためには、子どもは過去にこのような経験をしていなくてはならないし、それを思い出す能力を持っていなければならない。 つまりよい子を演じるにはそれなりの頭の良さが必要だし、頭がよい子はきわめて複雑な行動をして、大人にはわからない場合が多い。
子どもはその本能からありのままの子どもから成長を求めている。 それが子どもの喜びである。そのありのままが認められなくて、その辛さから逃れられないとき、その辛さを生じる刺激をなくする方法を、過去の記憶から無意識に見つけて行動をする。 子どもはその成長の過程で、大人から求められることをその時だけ受け入れることで辛さを生じる物から逃れることを知っている。
子どもにとって母親は最高の喜びである。 母親が子どもを責めない限り、子どもは母親の前ではよい子を演じない。 子どもは基本的に母親の前では素直な子どもの心で行動をする。 母親が子どもを責めると、子どもは母親の前でもよい子を演じるようになる。 子どもがよい子を演じきれなくなったときには、子どもは母親に向かって問題行動をするようになる。 子どもが母親の前と他人の前とで姿行動が違うときには、母親の前の姿行動が子どもの素直な姿であり、他の人の前の子どもの姿行動は、よい子を演じている姿である。
よい子を演じること自体は、解決できたらその子どもの新たな知識になる(いわゆる学習)。 しかし見かけと違って心の中では辛い(脳神経の反応では回避行動)から、無意識に、どこかでその辛さを解消する行動をすると同時に、辛さについて敏感になってくる。 心に余裕がある子どもや辛さがほとんど無い子ども心が元気な子どもの論理rules
for capable mindでは自分なりに遊びなどで解消できる。 多くは大人の目が届かないところで問題行動をすることで解消して悪影響を残すことはないし、場合によっては子どもの能力を伸ばすことにもなっている。 心が辛い子どもの論理rules
for unabled mindでは、大人の目の前で問題行動をするか、少しだけ心の余裕がある子どもは大人の目の前でよい子を演じて、大人の目が届かないところで問題行動をする。 これが大人には理由がわからない、思わぬ事件になることがある。 常識に反するので大人が気づかないうちに、子どもは辛さに敏感になっていき、よい子を演じられなくなっていく。
大人が、子どもがよい子を演じることを見分けるのはとても難しい。 多くは時間経過の中で、結果的によい子を演じていたことがわかる。子どもを目の前にして、子どもが心底よい子なのか、子どもがよい子を演じているのかを見分けるのは難しくて、不可能に近い。 子どもがよい子を演じていることを見分けるには、大人は常識を捨てて子どもを素直に見る必要がある。見分ける方法は以下のようである。
4−1 子どもの姿、行動が良すぎるとき
4−2 子どもが親が知らないところで、問題行動をしているという噂があるとき
4−3 子どもが過剰に享楽にふけっているとき
4−4 よいこと思っていた子どもがだんだん元気をなくして、母親の前でもいつもと違うと感じられるようになったとき
これらのことを加味しても、母親の前の子どもの姿行動が、一番子どもの素直な心からの姿行動に近い。
4−5 子どもが持っていない物を得ようとして努力する姿、挑戦する姿を、そして親からの報償(褒められる、ご褒美をもらうなど)を求める姿を、よい子を演じる行動と理解できないこともないけれど、前者は子どもが自分の能力を伸ばそうとする本能行動である挑戦と、後者は報償を求める接近系の情動行動と、回避行動であるよい子を演じる行動と区別した方が、理解が正しい。
$5 母親 2−1接近系の本能を参照
5−1 進化の過程で、子どもの成長に母親が絶対に必要。父親が子育てに関与するのは、母親が母親の機能を果たさないとき、父親がその機能を補おうとする。
5−2 母親は子育てに必要な物を全て備えている。
5−3 類人猿の実験から、ストレスにさらされた子どもには、暖かくて、柔らかくて、揺れる肌が、子猿のストレス状態を解消できることがわかっている。
5−4 子どもの観察から、子どもは母親を求める。 母親が存在しないときには母親に代わる人を求める。子どもが母親と認識している人を無条件で信頼しようとする。 子どもの問題の一つの側面は、母親が子どもを信頼しないことが関与していることが多い。
$6 子どもの行動を考えるとき
6−1 子どもの行動の種類
6−1.1 思考行動