子どもの立場からの登校拒否、不登校、いじめ、引きこもりについてQ and A version 4
{4。 年長の子どもの引きこもり }(1)基本概念
「引きこもりのメカニズムについて説明して下さい。」 目次へ戻る
心に大きな傷があり、その心の傷に触れる物が家の外にあると、子どもは無意識のうちにそれを避けて家の中に引きこもります。安全な場所である家の中で、または自分の部屋の中で、自分の心の傷を癒します。また、家の外に子どもの心の傷に触れる物が無くても、既に心に大きな傷があって疼き、身動きがとれないときには、子どもは家から外へ出ようとはしません。この場合、心の傷が少しでも癒えてきて、家の中で動けるようになると、必要があるときだけ、家の外に出られるようになります。
心の傷が癒えると、つまり家の外にある自分の心の傷に触れていた物にも疼かなくなったとき、子どもは家の外にも出ることができます。引きこもりとは、家の外にある、自分の心の傷に触れる物を回避する、子どもの潜在意識の領域での回避行動です。
小中学校での登校拒否、不登校の延長上で引きこもっている子どものほかに、高校生、大学生、社会人から引きこもる子どももいます。後者の子ども達の中には登校拒否、不登校を経験している子どももいます。登校拒否、不登校を経験をしていなくても、多くの引きこもる子ども達は学生時代に学校内で辛い経験をしています。学生時代に心に傷を受けて、その後、その傷が疼きだして引きこもるようになっています。
家の中や部屋の中に心の傷に触れる物がないと、または、心の傷に触れる物がある家の外に押しだそうとしないと、子どもはのびのびと生活をして自分の心を癒していきます。引きこもりを理解していない人がその姿を見ていると、なぜ子どもが家の外に出ないのか理解できません。しかし、引きこもっている子どもにストレスを与えると、子どもはいろいろな神経症状、精神症状を出してきます。その結果、子どもは自分の部屋の中に引きこもり、入り口のドアを開けようともしません。
引きこもりが回避行動とわかれば、引きこもりが出す症状や、対応法も必然的に導き出されます。回避行動を妨害すると、より強い回避行動や神経症状が出ることは動物実験でも示されています。猿などでは人間の精神症状に相当する症状も出しています。これらの実験結果からも、親や関係者が引きこもりの子どもを無理に家の外に引き出すのは好ましくないです。十分に引きこもれないと、つまり回避行動が十分にとれないと、神経症状や精神症状が強く出てきます。破壊行動に出る場合もあって、家庭内暴力や自殺という形をとることになります。それらは決して思考に基づく行動ではなくて、きわめて動物的な、潜在意識の領域での反応行動です。回避行動の一つの形です。
「あるがままの自分を認められると、なぜ子どもは元気が出る?」 目次へ戻る
子どもが辛い症状を出す原因の一つに、自己否定(自分で自分を否定している)ことがあります。自己否定に陥るといろいろな神経症状や精神症状をだします(欲求不慢性無報酬。小児脳科学心理学を参照)。引きこもりを認められているのに子どもがなかなか元気が出ない理由の大きな要因になっています。その場合、あるがままの自分を認められることは子どもが自己否定をしなくてよくなることですから、自己否定に伴う辛い症状が消失します。
「不眠と慨日リズムについて」 目次へ戻る
登校拒否不登校、引きこもりでの夜昼逆転は、慨日リズムが乱れていると言えます。慨日リズムは脳の視床下部の視交叉上核で生じます。人の場合それは25時間周期です。それが網膜に加わる光刺激で補正されて物理的な24時間周期になっています。光刺激としては2500ルックスという、昼間の外界の明るさがこの慨日リズムを補正します。光刺激以外にも視交叉上核の慨日リズムに影響を与える非光同調因子があります。それは視交叉上核に投射している脳の他の領域からの神経投射です。この神経学的な機構は未だ詳しくはわかっていません。
メラトニンは松果体から分泌されるホルモンです。人間では視交叉上核からの慨日リズムによって分泌されています。その分泌されたメラトニンは視交叉上核の慨日リズムにフィードバックしています。実験的には3時間夜の相を短くできます。
これらの高照度光刺激とメラトニンを使って、慨日リズムの障害を治療し成功した症例が報告されています。登校拒否、不登校、引きこもりのように、何かのストレスを避ける結果慨日リズムの乱れを生じている場合、ストレスが加わっている限り、高照度光刺激やメラトニンによる治療は意味がないと考えられます。高度光刺激やメラトニンを投与することが逆にストレスになることすら考えられます。その場合にはこれらを用いた治療は悲劇的な結果になるであろうと考えられます。たとえ治療が功を奏して慨日リズムが取り戻せたとしても、それ以後再びストレスが加わると、慨日リズムの乱れを再発することになります。
「親離れ、子離れをどう考えたらよいでしょうか?」 目次へ戻る
子どもが親離れをするまでは、母親は子どもの側にいてあげなければなりません。母親が傷ついた子どもの心を癒す必要があります。それまでは子どもに依存させてやる必要があります。
引きこもっている子どもが家を出るようになるには、それなりの家の外に子どもを引きつける物がなくてはなりません。子どもが外に何か必要性を感じなければなりません。そのために、子どもが自分の意志で生活をする必要があります。自分の意志で欲しい物を獲得して生活をしていると、家の中ではどうしても不十分になってきます。家の外の物を必要とするようになります。
親が子どもに必要な物を先回りして与えると、子どもは自分でそれを得ようとはしません。家の外に自分の必要な物を求めようとはしないで、全て親に依存した形で生活をします。この関係を打ち破るのが、子どもの側から見れば親離れです。親の側から見れば子離れです。子どもが家の中で動き出したら、それが子どもの親離れのサインです。親は少しずつ子離れをする必要があります。子どもが求めない限り、子どもを見ないようにするとよいです。その方が子どもにも、母親にも楽です。子離れをする一番よい方法は、母親が自分の趣味の目的で出かけることです。負担にならなければ、パートの仕事に出るのも手です。親離れのできた子どもには母親が仕事でいない事実を理解できます。
「自分を縛る事について説明して下さい」 目次へ戻る
子どもは放って置いても、何かを求めて動き出します。その際に、自分の持っている知識から、その行動の方向性を出してきます。その自分の持っている知識には、学校で習った知識、常識、親の思いなどがあります。これらの知識は子どもの行動を加速する場合(強者の論理)もありますが、辛い状態の子どもの場合では子どもの行動を抑制します(弱者の論理)。つまり子どもの心を縛る作用をします。特に引きこもりの子ども達には、心を縛り付ける作用が強いです。そのために子ども達は動きだそうとしても動き出せませないから、引きこまざるを得ないのです。引きこもっている子どもを動き出させるには、子ども達の心を縛っている知識や常識、親の思いを断ち切る必要があります。それらを断ち切っても、引きこもるような子どもの心は縛られ続けていますから、悪いことなどできません。安心して子ども達の心を縛っているものを取り除いてやればよいのです。
目次へ戻る