引きこもりのメカニズム
 
 子供の心に大きな傷があり、その心の傷に触れる物が家の外にあると、子供はその心の傷に触れる物を避けるために、殆どの場合無意識に、家の中に引きこもります。家の中に引きこもって、安全な場所である家の中で、自分の部屋の中で、自分の心の傷を癒します。自分の心の傷が癒えると、家の外にある自分の心の傷に触れていた物にも自分の心の傷が疼かなくなったとき、子供は家の外に出ることが出来ます。つまり、引きこもりとは、家の外にある、自分の心の傷に触れる物を回避する、子供の潜在意識の領域での回避行動です。
 引きこもる子供達には、小中学校での登校拒否、不登校の延長上で引きこもっている子供と、高校生、大学生、社会人から、引きこもる子供もいます。後者の子供達の中には登校拒否、不登校を経験している子供もいます。登校拒否不登校を経験をしていなくても、学生時代に学校内で辛い経験をしている子供が殆ど全てです。つまり、引きこもる子供達は学生時代に心に傷を受けて、その後、その傷が疼きだして引きこもるようになっています。
 家の中や部屋の中に、引きこもっている子供の心の傷に触れる物、または、心の傷に触れる物がある家の外に押しだそうとする物が無いと、子供はのびのびと生活をして、自分の心を癒していきます。引きこもりを理解していない人がその姿を見ていると、なぜ子供が家の外に出ないのか理解できません。しかし、引きこもっている子供にストレスを与えると、子供はいろいろな神経症状、精神症状を出してきます。その結果子供は自分の部屋の中に引きこもり、入り口のドアを開けようともしません。
 引きこもりが回避行動と解れば、引きこもりが出す症状や、対応法も必然的に導き出されます。回避行動を妨害すると、より強い回避行動や神経症状が出ることは動物実験でも示されています。猿などでは人間の精神症状に相当する症状も出しています。それ故に、親や関係者が、引きこもりの子供を無理に家の外に引き出すのは好ましくないのです。十分に引きこもれないと、つまり回避行動が十分にとれないと、子供の神経症状や精神症状が強く出てきます。その結果破壊行動に出る場合も有って、家庭内暴力や自殺という形を取ることになります。それらは決して思考に基づく行動ではなくて、きわめて動物的な、潜在意識の領域での反応行動です。回避行動の一つの形です。

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