引きこもり、ニート、フリーター

$引きこもり、ニート、フリーターとは
 引きこもりとは、学校にも行かず、働きにも出ず、一日の大半を家の中でぶらぶらして過ごす若者です。ニートと呼ばれる若者とは、引きこもってはいないが、引きこもりの若者のように学校にも行かないで、働きにも行かないで、学校に行くための勉強や働くための技能訓練を受けないで、社会から認められるような生き方をしていない若者です。フリーターとは正規の社員になることを希望しないで、一週間の内の何日かを、それも一日あたり数時間と短い時間だけ働くことを希望して、労働に従事する若者のことです。ただし、ここで若者と表現しているのは、義務教育を終えている年齢から、20〜30歳代ぐらいまでの男女を指しています。
 外見上、引きこもりも、ニートも、フリーターも、はっきりとした区別はありません。この引きこもりやニート、フリーターの若者達を、政府やマスコミなどの日本社会は、好ましくないと批判しています。ただし、それはこれらの若者達を表面的に理解して、批判しているだけで、これらの若者達をますます追い込んでしまう傾向にあります。引きこもり、ニート、フリーターを理解するには、これらの若者の姿、外見から判断するのでなく、これらの若者の心の中を理解する必要があります。
 心には意識に上る心、顕在意識と、意識に上らない心、潜在意識とがあります。引きこもり、ニート、フリーターの若者達の心を知るには、若者達の潜在意識を若者達の立場から正しく知る必要があります。その若者達の外見は、引きこもりや、ニート、フリーターの若者、各々で大きく異なっていても、その潜在意識はほぼ共通していて、登校拒否、不登校、若者の潜在意識にとても近いです。ほぼ同じと言って良いでしょう。
 引きこもり、ニート、フリーターの若者には、不登校を経験した若者、不登校を経験していない若者もいます。引きこもりの状態、ニートの状態、フリーターの状態を行き来している若者もいます。しかし、不登校を経験していても、不登校を経験していなくても、引きこもり、ニート、フリーターの若者達を理解するには、嘗て若者達が通った学校との関係を考えない限り、若者達の潜在意識がどのようにして形成されていったのかを理解することはできません。親や大人達は気づいていない場合が多いと思いますが、引きこもり、ニート、フリーターと呼ばれている若者達の大半(例外もあります)は、学校時代に学校に行きづらさを感じていた、登校拒否の状態であったという事実があります。登校拒否とは学校に対して恐怖の条件刺激を学習していたという脳科学的な状態です。
 
$潜在意識とは
 引きこもり、ニート、フリーターを理解するには、人間の潜在意識(脳内での反射的な反応)を知る必要があります。潜在意識とは顕在意識に登りません(知識のような陳述記憶は意識に上らせることができる)から、人は自分の直接潜在意識を直接知ることはできません。潜在意識を知るには、潜在意識が人の行動や体に表れた物を、脳科学的に理解することで分かります。脳科学的に理解するという意味は、今までの人間の脳の研究から得られた知識、人間に近いほ乳類の脳の研究から得られた知識から理解するという意味です。人間の潜在意識と人間以外のほ乳類(顕在意識がないと現在まで考えられている)の潜在意識と、共通点がたくさんあるからです。
 潜在意識としては、
学校での勉強などから得られた知識で、普段は無意識で利用しているが、必要に応じて顕在意識に登らせられるような知識
スポーツのような体を動かす反応の仕方
感情のような行動の動機となる反応の仕方(情動、感情とは情動を顕在意識で認知したもの)
の3つがあります。そして引きこもり、ニート、フリーターを考えるには、この感情のような行動の動機となる反応の仕方(情動)から、考える必要があります。
 現在日本社会の中で行われている、引きこもり、ニート、フリーターの心に関する議論の多くは、これらの若者の顕在意識についての議論です。脳科学から言うなら、顕在意識が働く大脳新皮質、前頭葉の前頭前野という部分の機能です。それに対して、引きこもり、ニートやフリーターについて問題を起こしている潜在意識を規定しているのは、大脳辺縁系です。引きこもり、ニート、フリーターの若者達の行動を規定しているのは、大脳辺縁系です。引きこもりの若者達が家から出ようとすると感じる不安、ニートの若者達が仕事場に行くと生じる不安、フリーターの若者達が仕事をしているとだんだん強くなる不安は、主として所謂対人恐怖、対人不安として理解されているものです。家に帰って、家にいてどっと感じる疲労感は、頻回に受けるストレス刺激からの鬱状態です。この恐怖や不安、鬱状態は、全て大脳辺縁系の機能から生じています。潜在意識である大脳辺縁系で生じる情動反応の不安が生じる原因や生じ方で、引きこもり、ニート、フリーターと分類されています。また、これらの若者達が持つ、自分たちはこうあるべきと言う思いと、自分たちのこうあるべきと言う思いを達成しようとすると不安が生じて、自分たちの思いが達成されない現実に直面して、これらの若者達は葛藤状態に陥っています。鬱状態になってしまいます。
 
$働くための行動式
 この潜在意識の情動は当人の顕在意識で知ることができませんから、引きこもり、ニート、フリーターの若者達が示した行動や反応から、観察者が今までの脳に関する知識を用いて分析することになります。それが脳科学です。引きこもり、ニート、フリーターについて、労働行動の動機付けに関する因子をまとめます。
 
「(労働)行動」=「欲求」+「周囲からの押す力」ー「不安」
 
これを「労働のための行動式」と呼ぶことにします。
 不安の要素がとても大きくて働くことは勿論、家の外にも出られないのが引きこもりであり、働くことはできないが、家の外には出られるのが、ニートであり、限定して働ける(主として周囲からの押す力、または限定した欲求が大きい)場合がフリーターです。そして多くの人は、この数式の「労働行動」と「周囲から押す力」の部分にばかり注目していらっしゃるようです。また、ニート、フリーター、引きこもりの若者達は、体の中から理由もなくわき上がってくる不安を解消するために、反射的に(当人も理由が分からない)刹那的な快楽を求めようとしています。 
 「欲求」と書きましたのは、ある行動をしたいという欲求です。欲求の結果お金を得られるかどうかは別のことになります。例えば政治家になりたい、漫画家になりたいという、願いです。この欲求が少ないという原因の主たる部分は、現代社会の学歴主義にあります。この学歴主義は昔と多くは変わっていません。つまり、若者達の仕事として〜したいという欲求は、昔も今も、さほど変わっていないと思います。勿論個人によって大きく異なりますが。
 周囲からの押す力には色々あります。お腹がすくために食べ物を得たい(そのためにはお金を稼ぐ必要があると言うのも入りますが、それは顕在意識からの欲求になります)。働けと言う親や社会からの圧力もあります。この若者を職場に押す力の内容は、昔と今と大きく異なっています。
 不安とは働く環境から受ける不安です。そして、ニート、フリーターと呼ばれる人たちにとって、一番の問題点です。職場の環境によって大きく異なります。現代の職場は、人を見ないで、見るときも主とした見方はお金で評価されるような傾向にあります。職場に対する新奇刺激からの不安もあるでしょう。多くのニートと言われている若者達が持つのが対人不安です。自分を責める可能性のある人に恐怖を感じてしまうのです。
 
$葛藤、自己否定
  引きこもり、ニート、フリーターと呼ばれる若者達について分析してみると、殆どの人が以前にとても辛い経験をしています。その辛い経験はその人によって異なりますが、かなりの割合の人が不登校を経験したり、不登校は経験しなかったけれど不登校気味(登校拒否)だったことがあります。これらの不登校を経験した人、または不登校気味(登校拒否)だった人とは、学校について恐怖状態を生じる恐怖の条件反射を学習していたことになります。学校で疼く心の傷を持っていたことになります。その様な人が親や周囲の人から学校に行く対応を付け続けると、新たに人で恐怖状態を生じる恐怖の条件反射を学習してしまいます。人で疼く心の傷を持っていることになります。
 また、引きこもり、ニート、フリーターと呼ばれる若者達は、人で疼く心の傷を持っていて、他の人では何でもないような人に接することで、その人の心の傷が疼いたとき、当人はなぜ自分が苦しくなるのか分かりません。そして、理由の見つからない、理解のできない苦しみから、自分が問題だと理解するようになります。自分が駄目な人間だと理解するようになります。それは所謂自己否定の状態であり、自己否定の状態は葛藤を生じますから、ますますその人は辛くなり動けなくなります。その人を否定する言葉などに敏感に反応して、辛くなり、回避行動、逃避行動を潜在意識から取るようになります。
 多くの大人は、所謂ニート、フリーター、引きこもりと呼ばれている若者を、いろいろな論点から非難をしていますが、所謂ニート、フリーター、引きもりの若者達も、意識の上では、これではいけない、働かなくてはいけない、定職に就くのがよい、家の中に引きこもっていてはいけないと考えています。しかし、実際には行動が伴いません。伴わないから、それらの若者達は葛藤を起こして、別な意味でも苦しんでいます。その苦しむ自分自身を否定している場合が多いです。つまり、意識の上で働こうとすることと、実際に働けることとは別のことなのです。若者が働くためには、意識に上らない、情動における働くためのエネルギーを考える必要があります。前述の「労働のための行動式」を考えなくてはならないのです。
「行動」=「欲求」+「周囲からの押す力」ー「不安」
ある若者が働かないと言うことは、「欲求」+「周囲からの押す力」と「不安」とが拮抗しているか、「不安」の方が大きいかです。「欲求」は一人の人では大きく変化することはないです。ですから、その人を働かせるには、「周囲からの押す力」を大きくするか、「不安」を小さくするかの方法が考えられます。現在の政策や、所謂専門家は、この「周囲から押す力」を高めようとしています。この「周囲から押す力」を高めるだけで、若者が働けるのなら、話は簡単です。それでは解決しないから、現在問題が大きくなってきています。つまり、おおくの若者では「周囲から押す力」が大きくなると「不安」も大きくなってしまう、おおくの若者ではそれ以上に大きくなってしまうと言う事実があります。
 
$欲求
「欲求」についてです。この潜在意識の欲求について議論をするのは大変に難しいです。その理由は、脳科学的に、接近系の反応は余りよく分かっていないからです。確かに欲求があることは事実ですが、若者達や大人達を観察すると、〜したいとの潜在意識からの欲求は、幼い若者ほど強く、それが20歳代ぐらいまで続き、30歳代くらいになるとだんだん弱くなっていくように感じています。あくまでも私が観察した結果です。若者達の欲求の多くは、若者達の集団、特に同年代の集団に加わりたいという欲求が主なようです。ですから、20歳代になりますと、同年代の集団として、または大人の集団としての職場に行きたいという欲求になります。
この潜在意識からの働きたいという欲求は、人間が持つ与えられた環境に、与えられた人間社会に、順応しようとする、人間という生物が持つ、自然淘汰に打ち勝とうとする本能からの、接近系の欲求であろうと、推定されます。
この欲求を古典的な条件付けで強めることができるかどうか、私も大変に興味を持っていますが、現在まで、この欲求に関する研究を私は知りません。また、古典的な条件付けでこの欲求を高めるようなことが、人間社会の中で起こっているような場面にも出会っていません。
 
 
$周囲から押す力
現在、ニートやフリーターに関しては、「周囲から押す力」を高めても、「不安」が大きくならないような試みが成されています。確かにそれで一時的にニート状態を脱出した若者もいることは事実です。けれど依然として十分な結果が出ていません。その理由としては、なぜニートやフリーターと呼ばれる人たちが、職場に不安を感じてしまうかの心の仕組みが分かっていないからです。現在の心理学では、概念上の心に関して、不安の仕組みを考えているのであって、脳という実態に即していないからです。
不安は脳科学的には恐怖刺激に対する回避行動が何かの理由で抑制された状態です。大脳辺縁系の扁桃体、海馬、視床下部、中心灰白質が関与しています。ですから、フリーターやニートの若者が潜在意識で感じている「不安」とは、若者が何かの恐怖刺激を受けていて、その恐怖刺激についての回避行動が何らかの理由で抑制されていると考えられます。ニートやフリーターの若者達が受けている恐怖刺激とは何かという問題が、解決されないと、ニートやフリーターの問題が解決しないことになります。
若者が不安状態にあることは外見から分かります。けれどなぜ不安状態になっているのか、外見からでは分かりません。ですから、精神科医療では鬱病として治療をする医者も居るぐらいです。不安を感じる傾向が分かった場合には、対人恐怖症とか、広場恐怖症とか、狭所恐怖症とか、病名を付けて、治療をする場合もあります。それを脳科学的に考えるなら、何かの恐怖刺激を受けて、それに反応して、不安状態になっています。何かの恐怖刺激がなければ、不安状態になりません。ですから、恐怖刺激がなければ普通なのですから、病気ではないです。恐怖刺激がなければ、普通の若者として生活ができます。ニート、フリーターでは職場に若者の感じる恐怖刺激が無ければ、若者は一般の大人と同じように働けます。
働くための行動式
「行動」=「欲求」+「周囲からの押す力」ー「不安」
の、「周囲から押す力」についてです。この力は自然に生じる力ではありません。勿論顕在意識の意志から生じる力でもありません。親や周囲の人から、行動をしないと罰せられるから、行動をするとご褒美をもらえるから、という理由から生じています。
行動をしないと罰せられるという、罰を予測させて、周囲から押す力を生じさせた場合、それは不安を与えることを意味しています。不安とは、罰のような恐怖を予想させる刺激を受けたときの動物の反応の仕方と定義されるぐらいですから。つまり、不安を与えられることは職場にある不安への閾値を低くします。職場の不安に強く反応しやすくなります。ニートと呼ばれる人にとっては、罰を予測させることで、職場に送り出されたときには、職場で働き続けることが難しくなる場合が多くなります。勿論職場に不安がなければ、働き続けられます。
行動するとご褒美がもらえると言う理由から、ご褒美を予測させて、周囲から押す力を生じさせた場合、それは職場の不安への閾値を上げることになりますから、職場に不安があっても働き続けることができる場合が多くなります。
 
 
$不安
誰が見ても恐怖刺激がない、ストレス刺激がない職場に、なぜ、ニートやフリーターの若者が恐怖を感じるのか、おかしいという議論があると思います。それはニートやフリーターと呼ばれる若者達には、既に不安状態にあるから、恐怖刺激に対して敏感になっているという事実があげられます。なぜ、ニートやフリーターと呼ばれている若者達には既に不安状態にあるのか、それは後ほど説明するとして、現実に当人も気づかないような不安を抱えて職場に出向く訳です。
経済的な成果を上げなければならない職場では、人の心よりも、経済が優先しています。それはニートやフリーターの若者にはストレス刺激となり、不安の原因になっています。職場から受けるストレス刺激を私なりに分析してみると、職場での仕事上の要求をしてくる人への対人不安、が最初に出会う不安のようです。この不安を抱えている=鬱状態(鬱病ではない)では、体が思うように動かないです。当然仕事が要求通りにできない。それは葛藤を生じ、ますます鬱状態を強めて、動けなくなる。仕事を続けることができなくなると言うことになります。
つまり、ニートやフリーターと呼ばれる若者達の多くは、大半は、当人が気づいている場合もありますが、多くは気づいていないが既に持っている、それは潜在意識にあるので気づくことが難しいのですが、他の人への不安があります。人で疼く心の傷を持っています。この心の傷の疼き、不安が若者達を職場に定着させることができなくて、ニートやフリーターの若者達を作っています。
 
$不安の解消法
現実に人への不安を抱えた若者や大人がニートと呼ばれる状態になっています。この不安を抱えたまま、社会や職場に出ることをニートと呼ばれる人たちに要求すると、より不安を強くして社会や職場を拒否せざるを得なくなります。ニートと呼ばれる人を否定しても、この潜在意識にそんざいする不安を増強するだけで、ニートの問題を解決できません。不安という物を脳科学的に考えることで、解決が見えてきます。
脳科学的に不安の解消法は
長い時間不安刺激に接しないようにして、不安刺激を忘れてしまう
強い快適刺激で不安刺激を快適刺激に変えてしまう
顕在意識の意志で、不安を調節して押さえてしまう
の三つの方法があります。この三つを人と状況に合わせて考えながら対応をしていく訳ですが、どれも大変に難しい対応です。時間を要します。家族、特に両親の協力を必要とします。
長い時間不安刺激に接しないようにするという意味で、テレビやビデオゲームや漫画、インターネットなどは、不安を持った人の時間の経過を待つのには良い方法です。勿論もっと一般の人にも認められ、非難されないような時間の過ごし方も考えますが、どうしてもエネルギー不足から、刹那的な快楽で時間を過ごすことしか、選択の余地がない人が多いです。
強い快適刺激で不安刺激を快適刺激に変えてしまう方法は大変に難しいです。現在の物質的に豊かな時代では、その時代に育った人にとって、強い快適刺激が存在しないという問題点があるからです。
 
$不安を調節する
顕在意識の意志で、潜在意識の不安を調節する方法が、ニートと呼ばれている人たちの潜在意識にある不安を取り除く方法として、おおくの人が試みしている方法ですし、私も実際に行っている方法です。ここでもう一度不安を生じる大脳辺縁系と意志を生じる前頭葉前頭前野の脳科学的な問題を考えてみる必要があります。大脳辺縁系で不安を生じるようになってしまったという事実はどうしようもありません。そこで大脳辺縁系を調節する能力を持っている前頭前野に期待するのは、当然の考え方ですし、実際に可能です。
ところが前頭前野に関係する神経繊維の髄鞘化は思春期から20歳を過ぎて完成してきます。それまでは、前頭前野の機能は不完全であり、大脳辺縁系の不安を調節することが大変に難しい、できないと言って良いと思います。また、前頭前野に関係する神経繊維の髄鞘化が完成しても、すぐに大脳辺縁系の不安を調節できるようになる訳ではありません。そのためには、大脳辺縁系の不安を調節する練習をする必要があります。それにはある期間を必要とします。それを治療として行うのが、所謂認知療法という物に属すると言って良いと思います。おおくの人は成長の過程で、社会に順応するために、気づかないうちに自分で行っている訳ですが、結果として周囲の人が感じるのは、その人の性格が丸くなった、大人びたと感じるようになることです。
 
$不安の調節と前頭前野
前頭前野の顕在意識、意志から不安を調節できるようになるには早くても20歳を過ぎなくてはならないです。勿論個人差もありますし、性差もあります。それを含めてその人個人に合わせて考えていく必要があります。どの人でもできるようになるには、20歳の後半ぐらいからと考えて間違いありません。
前頭前野の顕在意識、意志から不安を調節することで、潜在意識の不安を調節して、不安を生じるような場所に臨み、生じた不安を意志の力で調節して、目的を達しようとする訳ですが、意志の力にも限界があり、大脳辺縁系の不安が大きすぎると、逆に前頭前野の機能を押さえつけて、感情に押し流される、不安に襲われる、パニックになると言う場合もあります。特に、意志の力で不安を調節し始めたときには、意志の力で不安を調節する能力が弱いです。弱いから簡単に不安が強く出て、意志で不安を調節できなくなります。その意味で、不安に慣れながら、社会や職場に出て行くというやり方は、それなりに意味があります。
このように心の構造を、心の機能を考えたとき、ニートと呼ばれる人たちの問題を解決するにはニートと呼ばれる人の潜在意識にある不安への対応法として、心の成熟度から対応を変える必要があります。
まず、20歳過ぎぐらいまでは、不安の原因を忘れる対応しか方法がないと言えます。ニートと呼ばれる人を、不安の原因となる刺激から隔離で来る場所、即ち安全な場所に隔離して、その人が楽しいと感じることをして、時間の経過を待ち、不安刺激に対しての反王制を低めるようにすることになります。
20歳過ぎぐらいから、意志で感情を調節することが出来るようになってきますが、十分にはできません。まだ意志の力で感情を調節することは期待しないで、ニートであることを責められない安全な場所で、自分の意志で行動する練習を積極的にさせてあげることです。自分の意志で自分の行動をすることにより、その際に生じる感情を、自分の意志で調節する練習をします。
20歳代の半ば頃から、自分の意志で感情を調節する練習を積極的に行う必要があります。それはニートと呼ばれる人一人で行うのは難しいので、カウンセリングを受けながら行うことになります。ある程度自分の意志で感情を調節できるようになったら、社会に出て行き、就職しながら感情の調節を練習していくことになります。
これはあくまでも目安です。個々の若者の成長の度合いによって、意志による感情の調節力がことなりますから、親が若者の感情の調節力を考えながら、対応を試みていくことになります。
 
$不安と親
ニートと呼ばれる人の問題の根本は、その人達の潜在意識にある不安です。その不安を解消するには、親の協力がとても有効です。親がニートと呼ばれる人に、いかにして安心感を与えるかです。
ニートと呼ばれる人の多くは、自分がニートと呼ばれる状態にあることを、良くないと考えています。何かをしようとしても体が動かないのです。ニートと呼ばれる状態から抜け出せない、自分自身を否定しています。その結果、ますます不安が強くなり、動けなくなっています。
この掲示板に見られるように、社会的にはニートを否定する傾向にあります。それもニートと呼ばれる人たちの不安を強くしています。確かに見かけは、ニートと呼ばれる人を非難したくなるのはよく分かるのですが、ニートと呼ばれる人の立場から言うと、それは誤解からの発言であり、根拠のない中傷のような物です。
この悪循環を断ち切るには、親からニートと呼ばれる人のありのままの状態を認められることが大切です。常識に反しますが、親がニートと呼ばれる人の仕事をしないで、家の中でその人なりの生活をしているのを、それでよいと肯定してあげることが大切です。肯定的に表現されると、ニートと呼ばれる人の不安が減少し、何かをしようとするエネルギーが大きくなってきます。働くための行動式が、働く方への行動になってきます。
そのエネルギーが不安よりも大きくなったときには、社会に出て、職場で働くことが可能になります。
ニートと呼ばれる状態から、若者を元気にして社会で働けるようにするには、親の協力が必要だと言いました。その協力とは若者に安心感を与えて、若者の〜したいというエネルギーを増やすのに協力することですが、親が居ない人、親がいても若者を守ろうとしない人では、若者自身が自分でこの不安を解消する必要があります。そのためには、自分の意志で自分の潜在意識にある不安を調節する必要があります。それができるようになるのが20歳代の後半からですから、それまでは引きこもったり、フリーターのような形で、自分の意志で自分の生活を勧めていく練習をしておく必要があります。
第三者がこのニート問題を解決しようとするなら、ニートと呼ばれる人の潜在意識にある不安を見つめながら、それを調節するためのカウンセリングを行うことです。薬では絶対に治りませんし、薬を使うことで不安が隠されてしまい、問題を見失ってしまいますし、カウンセリングの効果を減弱してしまいますから、原則として、薬は使わない方が良いです。薬を飲まなくては症状が改善しないようでは、その人はよほど大きな責めを受けていることになりますから、ニート問題の解決と言うより、心の傷の解決という方が先になります。症状が消失するような対応を続けていくことになります。それはおおくの場合、その人のあるがままを認め、その人が安心して生活ができるようにしてあげることです。
 
$不安の原因
 引きこもり、ニート、フリーターと呼ばれる若者達について分析してみると、殆どの人が以前にとても辛い経験をしています。その辛い経験はその人によって異なりますが、かなりの割合の人が不登校を経験したり、不登校は経験しなかったけれど不登校気味(登校拒否)だったことがあります。これらの不登校を経験した人、または不登校気味(登校拒否)だった人とは、学校について恐怖状態を生じる恐怖の条件反射を学習していたことになります。学校で疼く心の傷を持っていたことになります。その様な人が親や周囲の人から学校に行く対応を付け続けると、新たに人で恐怖状態を生じる恐怖の条件反射を学習してしまいます。人で疼く心の傷を持っていることになります。
 また、引きこもり、ニート、フリーターと呼ばれる若者達は、人で疼く心の傷を持っていて、他の人では何でもないような人に接することで、その人の心の傷が疼いたとき、当人はなぜ自分が苦しくなるのか分かりません。そして、理由の見つからない、理解のできない苦しみから、自分が問題だと理解するようになります。自分が駄目な人間だと理解するようになります。それは所謂自己否定の状態であり、自己否定の状態は葛藤を生じますから、ますますその人は辛くなり動けなくなります。その人を否定する言葉などに敏感に反応して、辛くなり、回避行動、逃避行動を潜在意識から取るようになります。
ニートと呼ばれる人の潜在意識にある不安はどのようにしてできるかという問題に入ります。ニートと呼ばれる状態で気づくことが多いので、不安神経症と精神疾患と考える人が多いです。けれど、不安を起こす原因がありますから、精神疾患ではなく、生理的な反応です。このことをニートと呼ばれる人自身が気づいている場合もありますし、無い場合もありますが、殆ど全ての例で学生時代から不安を持っています。学生時代、とても元気であって、とても不安を持っていそうもない人でも、不安を持っていたという意味です。
不安の大半は学校で辛いことがあったことから始まっています。これもニートと呼ばれる人が気づいていない場合もあります。その辛い学校に無理をして通い続けることで、今度は人について不安を感じるようになっています。その神経生理的なメカニズムはここでは触れません。得体の知れない、どこからともなくわき出す不安に苦しむようになり、その様な自分を否定することから、ますます人に対する不安に敏感になっていきます。
その不安の程度が強くて、とても家の外に出られない人が引きこもりの人です。家の外には出られるが、何か負担をかけてくる人に反応してしまうのがニートです。何か負担をかけてきても、少しぐらいは耐えられる人がフリーターとして短期間なら働くことができます。
ニート、フリーター、引きこもりは、見かけは違っても、心の中は同じです。働くための行動式
「行動」=「欲求」+「周囲からの押す力」ー「不安」
の不安はこのようにして生じています。当然心の傷の深さにより、この不安の大きさは異なります。それまでに受けてきた辛い経験の程度、回数などでも異なりますし、不安の悪循環と言って、不安があるところにその不安を否定したり、無視する対応を受けると、ますます不安が強くなります。例えば不安があるのに、その不安を無視して、その不安があるのに顕在意識上説得されて、無理矢理同意させられて、不安のある職場に押し出されたりすると、それまで持っていた以上の不安を生じるようになります。その不安がますますその職場に不安を感じるという形で悪循環を来します。その理由は、不安には相乗効果があるからです。不安があると不安に敏感になっています。その結果少しの不安刺激で、大きな不安を感じ、ますます不安に敏感になってきますから、その次の不安刺激にもっと大きな不安を感じてしまいます。その悪循環が生じて、最終的には不安に耐えきれなくなってしまいます。他の人から見たら、他の人では何でもないのに、不安な人は不安から動けなくなったり、逃げ出したりするので、あの人は問題の人だと言うことになります。
引きこもりはこの不安がとても強くて部屋の外、家の外には出て行けない状態です。ニートとは家の外には不安を感じないが、職場のような人と密接に接しなければならないと、その職場に不安を感じるような場合です。フリーターもニートと同様ですが、お金を稼ぐと言う意味での欲求や、親や周囲の人からの押す力で職場へと行動してしまう場合です。このフリーターの場合不安の悪循環を生じて、不安が大きくなる場合が多いですから、短時間で職場を辞めてしまう場合が多いです。
 
 
働くための行動式は、潜在意識、情動からの働こうとする力を述べた物です。これは人が働こうとする意欲として、または働くのが辛い、働きたくないという形で感じ取られる物です。それ以外に、既に働いている人には習慣として働き続けるという力がありますが、ニートと呼ばれる人を考えるときには、この習慣から働き続ける力を考える必要はありません。また、顕在意識の意志から働こうとする力もありますが、ニートと呼ばれる人では、顕在意識の意志から働こうとしても、潜在意識の情動から、働くのが辛いという力が強く働いて、働けない状態にあります。大人ではこの顕在意識の意志が潜在意識の情動を調節して、働きたくないという力を押さえて、働くことができますが、ニートと呼ばれるひとではそれができません。ニートと呼ばれる人の内でも大人の年齢になっている人でも、顕在意識の意志で潜在意識の情動を調節する訓練ができていないでその年齢になっていますから、やはり顕在意識の意志で潜在意識の情動を調節して働くことができません。
働けていた人が働けなくなる場合もあります。その場合には潜在意識の情動の力が強く働いて、顕在意識の意志の力で調節できなくなった場合です。この場合にはいくら意志の力で働こうとしても、心の奥底から湧いてくる辛さから、働けなくなります。
 
2465
ニートの問題を解決するには、ニートと呼ばれる人の潜在意識にある、不安を解決する必要があります。その不安の多くは、その人のあり方を否定する可能性のある人、その人のあり方を否定する可能性のある場所への恐怖という形で現れています。つまり、ニートと呼ばれる人が職場に行くことで、そこにいる人から仕事ができなくて叱られるとか、仕事が自分の能力以上(仕事に自信がない)なので、その様な人がいる、その様な仕事の場である職場を回避しようとしてしまいます。その様な職場に行くことで恐怖の症状を体中に表現してしまうことにあります。
ニートと呼ばれる人は、その人のあり方を否定しないような人の所には行けますし、その人のあり方を否定しないような場所にも行くことができます。このようなニートと呼ばれる人を周囲の人が見たとき、普通に生活できるのに、職場に行くとおかしくなる人として、仕事をしたくない人、人間として価値がない人として、理解するようになります。それはこの掲示板に見られるように、ニートと呼ばれる人を問題視する発言になります。
 
2591
ニートと呼ばれる人の心の傷、その心の傷が疼いて不安を生じる、またはとても不安を感じやすくなっている、その心の傷は、ニートと呼ばれる人が学生時代に作っている場合が多いです。本来なら不登校になるところを無理をして、無理をさせられて、学校に行き続けたことによって、どんどん心の傷を深くし、広げています。その結果、高校時代、大学時代、心の傷の疼きに耐えかねて、引きこもりやニートと呼ばれる状態の人になっています。中には心の傷が浅くて、学校を卒業後就職をして、働いている内に、職場で心の傷をより深くされて、広げられて、仕事が続けられなくなって、職場を辞めてニートと呼ばれる状態になっています。
勿論人により程度の差はありますが、ニートと呼ばれる人が恐怖刺激に、不安刺激に反応する刺激閾値が、普通の人とは格段に低くなっていて、恐怖刺激に、不安刺激に、とても敏感になっているのです。その事実を多くの人も、そして場合によっては本人も気づいていません。受けた恐怖刺激、不安刺激が普通の人ではとてもその様には思えない程度な物ですから、なぜニートと呼ばれる人が職場で心が傷ついたり、心の傷が疼いたりするのか理解できません。
 
$脳科学からの言葉の説明
「葛藤」
 
「心の傷」
 
「恐怖と不安の違い」
恐怖に関して脳内の情報処理の流れ。
動物が嫌悪刺激を受けたとき、その情報は感覚野で処理されて、感覚連合野で処理されて、扁桃体に送られて、嫌悪刺激について評価(反応の形が決められて)がされて、中心灰白質から反応という形で体中の必要な筋肉に情報が送られ、目に見える反応を行います。また、扁桃体から、視床下部や脳幹に情報が送られて、内臓器官に恐怖の反応(自律神経や、ホルモンを介して)が表現されます。その内的な表現の一つとして、青班核などの脳幹の賦活化細胞から大脳新皮質に情報が戻されて、大脳新皮質での情報の処理過程に影響を与えています。それが精神症状と密接な関係があります。
 
「不安に関して脳内の情報処理」
動物が示す不安に関しては、嫌悪刺激の内でも不安を引き起こす刺激で、上記の恐怖の情報処理の他に、扁桃体から海馬に情報が送られて、海馬から中心灰白質に情報が送られて、中心灰白質で反応という形で表現しようとする神経回路を阻止した状態です。その結果、外見からは恐怖の回避行動は無くなりますが、動物の体内では、恐怖の表現が成されていますし、大脳新皮質での情報処理も恐怖と同じような影響を受けています。
 
「人間での恐怖に関する情報処理」
ただし、これは動物での恐怖や不安の表現の仕方です。人間ではこの反応の他に、大脳新皮質、他の動物と違って、特に発達した前頭葉での反応が加わります。恐怖刺激への反応は動物と共通ですが、恐怖刺激に対する回避行動を繰り返すことで、恐怖刺激の周辺情報(多くは陳述記憶)が感覚連合野にでき、恐怖刺激の概念が前頭前野にできて、運動連合野に恐怖からの回避行動を起こす神経回路ができます。その恐怖刺激の概念と回避行動の神経回路ができると、それ以後の嫌悪刺激の情報は感覚野で処理されて、感覚連合野で処理されて、一方では大脳辺縁系扁桃体に情報が送られて、情動を生じるとともに、一方では前頭前野に送られて、嫌悪刺激についての概念が認知されるとともに、運動連合野の神経回路から、運動野に情報が送られて、学習の結果できあがった神経回路からの回避行動を生じるようになります。そして、回避行動の神経回路の場は、中心灰白質から運動連合野、運動野に移ってきます。この段階でも、これらの反応は意識には登りません。
 
「人間での不安に関する情報処理」
嫌悪刺激に対する脳内の情報処理は恐怖の場合と同じですが、不安を起こす場合の嫌悪刺激は、前頭前野に嫌悪刺激の概念が認知されるとともに、頭頂葉や側頭葉にある、その嫌悪刺激についての陳述記憶が呼び起こされます。その陳述記憶が前頭前野の意識に関するワーキングエリアを介して、前頭葉後部の運動連合野から運動野に情報が送られて、嫌悪刺激に対する回避行動に行動抑制をかけてしまう場合に、人は不安状態になります。
人間の場合、扁桃体で評価された情動刺激は、視床下部や脳幹に送られて、情動の具体的な表現の情報に変えられるとともに、帯状回などの大脳辺縁系で処理されて、前頭前野眼窩上回から前頭前野に影響を与える場合があります。喜び、または恐怖や不安からの行動は、これによっていると考えられます。
 
「新奇刺激」
就職の際に多くの人が感じる恐怖や不安は、「新奇刺激」と言って、今まで知らない物、経験していない物、に出会ったときに感じる恐怖や不安です。この恐怖や不安には「慣れ」があります。所謂頑張ること、つまり恐怖や不安に耐えていると、だんだん恐怖や不安が無くなります。多くの人はニートと呼ばれる人が感じる不安を、この「新奇刺激」と間違って理解しています。
ニートと呼ばれる人が感じる恐怖や不安は前記の「新奇刺激」の他に、その場所に、そしてそこにいる人に恐怖や不安を感じています。それは普通の人が感じない恐怖や不安です。所謂対人恐怖です。対人恐怖と言っても、その人を否定する可能性、その人を責める可能性のない人なら、この恐怖や不安は生じません。ニートと呼ばれる人は、職場にいる人を見たり意識したときに、無意識にその人を否定する可能性と結びつけて、職場にいる人に、恐怖や不安を感じてしまいます。
その恐怖や不安が強いと、その職場には行けないし、行っても逃げ出さなくては、どうにもならなくなるのです。その恐怖が弱いと、無理をして職場に居続けられますが、その際に、職場にいる人にその人を否定する可能性が無いことが納得できたなら、職場に居続けられます。行き続けられます。職場にいる人に、その人を否定する物を感じたときには、その人はそれ以後職場に行けなくなります。

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